健康経営の施策10選|課題別の選び方とKPI・効果測定
「健康経営に取り組みたいが、どの施策から始めればよいか分からない」「イベントを実施しても成果を説明できない」——そんな企業担当者向けに、健康経営の代表的な施策10選を課題別に整理しました。各施策について、対象となる課題、実施方法、KPI、注意点を確認できます。大切なのは施策の数ではなく、自社の健康課題に合う施策を選び、KPIを決めて振り返ることです。
※健康経営優良法人の認定要件は年度や申請区分によって異なります。本記事で紹介する施策を実施すれば認定されるというものではありません。申請時はACTION!健康経営の公式情報で最新の認定要件をご確認ください。
健康経営の施策は「自社の課題」から選ぶ
他社で評判の施策をそのまま導入しても、自社の課題と合っていなければ参加や改善につながりません。まず、健診結果、ストレスチェック、勤怠、従業員アンケートなど、すでに保有している情報を個人情報に配慮して集計し、優先する課題を決めます。
| 課題 | 優先したい施策 | KPIの例 |
|---|---|---|
| 健診後の対応が進まない | 事後措置、受診勧奨、保健指導 | 意見聴取実施状況、保健指導実施率 |
| 運動・食事などの生活習慣 | 運動機会、栄養支援、測定会 | 参加率、行動開始率、継続率 |
| ストレスや長時間労働 | 職場環境改善、相談体制、休養支援 | 高ストレス者割合、残業時間、相談認知度 |
| 施策が従業員へ届かない | 健康教育、管理職研修、参加型イベント | 認知度、参加率、満足度 |
| 成果を説明できない | KPI設計、再測定、健康風土の確認 | 行動変容、前後差、施策認知・理解度 |
健康経営の施策10選
厚生労働省「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」では、運動、メンタルヘルス、栄養、口腔保健、睡眠、喫煙、飲酒などが具体的なテーマとして示されています。ここでは企業が検討しやすい施策を10項目に絞り、選定と振り返りに必要な情報をまとめます。
1. 健康診断の受診促進と事後措置
対象課題:未受診者がいる、健診後の対応が止まっている。
実施方法:受診しやすい日程・会場を整え、結果通知、医師等からの意見聴取、必要な就業上の措置までを担当者と期限付きで管理します。
KPI:健診受診率、意見聴取の実施状況、要対応者への案内実施率。
注意点:健康診断の結果は要配慮個人情報です。閲覧権限と保管方法を定め、法令上必要な対応と任意の健康施策を混同しないようにします。
事後措置の根拠と全体像は厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」をご確認ください。実務の流れは健康診断後のフォローの解説でも整理しています。
2. 保健指導・受診勧奨
対象課題:再検査や生活改善の必要性が伝わっても、次の行動につながらない。
実施方法:対象者へ相談先と具体的な行動を案内し、勤務時間内やオンラインなど利用しやすい選択肢を設けます。
KPI:保健指導実施率、医療機関の受診確認率、支援継続率。
注意点:受診や指導を一律に強制せず、本人の状況とプライバシーに配慮した個別支援を行います。
健康診断後の保健指導に関する事業者の役割は、厚生労働省「定期健康診断有所見率の改善のための取組」に示されています。
3. 身体活動・運動支援
対象課題:運動不足、座位時間の長さ、腰痛や身体機能低下。
実施方法:歩数企画、短時間体操、運動教室、階段利用など、勤務中にも選べる機会を用意します。
KPI:参加率、週当たりの運動実施日数、継続率、座位時間の自己評価。
注意点:体力や持病には個人差があります。安全面を確認し、参加できない人を不利に扱わない設計が必要です。
4. 食生活改善の支援
対象課題:朝食欠食、野菜不足、間食や外食の偏り。
実施方法:管理栄養士への相談、社員食堂や弁当の栄養表示、実行しやすい食事例の提供を組み合わせます。
KPI:相談利用率、改善行動の開始率、一定期間後の継続率。
注意点:体重や食事を一方的に評価せず、勤務形態、文化、アレルギーなどの違いを踏まえて選択肢を示します。
5. 睡眠・休養と長時間労働への対策
対象課題:睡眠不足、疲労の蓄積、長時間労働、有給休暇を取りにくい職場。
実施方法:睡眠教育だけでなく、業務量、残業、休憩、勤務間の回復時間を確認し、職場運用も見直します。
KPI:時間外労働、休暇取得状況、睡眠・疲労の自己評価。
注意点:本人のセルフケアだけに原因を求めず、業務配分や人員体制など組織側の要因も確認します。
6. メンタルヘルスと職場環境改善
対象課題:ストレス、相談先の認知不足、心理的負担の高い職場。
実施方法:ストレスチェック、相談窓口の周知、セルフケア教育、管理職向けラインケア研修、集団分析を活用した職場改善を組み合わせます。
KPI:相談窓口の認知度、研修参加率、集団分析後の改善実施率、ストレス関連指標。
注意点:個人の結果が職場で不適切に共有されないようにし、相談しやすさと守秘性を確保します。
制度の対象や集団分析の最新情報は、厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」で確認できます。
7. 禁煙支援と適正飲酒
対象課題:喫煙、受動喫煙、飲酒による健康リスク。
実施方法:禁煙相談や治療情報、受動喫煙対策、飲酒量を振り返る教材、相談先を提供します。
KPI:支援利用率、禁煙継続率、行動を見直した人の割合。
注意点:本人を責める表現や過度な監視は避け、依存への専門的支援につながる選択肢を用意します。
8. 女性の健康と治療・仕事の両立支援
対象課題:月経・更年期等による就業上の困りごと、がんや慢性疾患の治療と仕事の両立。
実施方法:従業員と管理職への研修、相談窓口、休暇・柔軟な勤務制度、復職や配慮の手順を一体で整えます。
KPI:制度認知度、相談先認知度、研修受講率、制度利用者の就業継続状況。
注意点:本人の同意なく病名や事情を共有せず、特定の性別や当事者だけの問題として扱わないことが重要です。
女性の健康に関する企業の取り組みは、経済産業省「女性の健康の取組について」でも紹介されています。
9. 参加型の健康イベント・測定会
対象課題:健康施策の認知や参加が広がらず、健康への関心が一部の従業員に偏っている。
実施方法:身体状態を知る体験、運動、栄養、リフレッシュなどを入口にし、その後の相談や既存施策へつなげます。
KPI:参加率、初参加者割合、満足度、次の支援への移行率。
注意点:楽しさや参加人数だけを成果にせず、目的と次の行動を事前に決めます。
具体的な企画は福利厚生の健康イベント10種類で比較しています。
10. 健康リテラシー向上と効果測定
対象課題:情報発信が読まれない、施策の成果を経営層へ説明できない。
実施方法:自社の課題に沿った短い情報発信や研修を行い、参加率、行動変容、健康・組織指標を定期的に確認します。
KPI:施策認知度、理解度、行動開始率、前後測定、健康風土に関する指標。
注意点:短期間で健康指標だけの改善を求めず、実施、行動、成果を分けて継続的に評価します。
すべてを同時に行うのではなく、事業場の実態に合う健康保持増進施策から選ぶことが大切です。
目的別に選ぶなら、この組み合わせ
| 目的 | おすすめの組み合わせ |
|---|---|
| 健診を受けて終わりにしたくない | 事後措置+保健指導+健康状態の見える化 |
| 健康施策への参加率を上げたい | 参加型イベント+勤務時間内実施+具体的な申込導線 |
| 運動・食事の改善を続けてほしい | 初回測定+専門職支援+3〜6か月後の再測定 |
| 経営層へ成果を説明したい | 課題の基準値+3層のKPI+前後比較 |
| 健康経営を文化として定着させたい | 管理職理解+従業員参加+健康風土の定期確認 |
健康経営銘柄2026の分析では、選定企業は健康施策だけでなく、組織全体の雰囲気や健康風土の醸成状況を把握している割合が高いことが示されています。施策を実施したかだけでなく、従業員に届き、職場へ根づいているかを確認する視点が重要です。詳しくは経済産業省「健康経営銘柄2026選定企業紹介レポート」をご覧ください。
KPIは「実施・行動・成果」の3段階で設定する
KPIを参加率だけにすると、「実施したが何が変わったか」が説明できません。経済産業省「健康投資管理会計ガイドラインの概要」も踏まえ、次の3段階で設定すると、施策と成果のつながりを整理しやすくなります。
| 段階 | 確認すること | KPIの例 |
|---|---|---|
| 実施 | 施策が届いたか | 認知度、参加率、保健指導実施率 |
| 行動 | 本人の行動が変わったか | 運動開始率、食習慣改善率、継続率 |
| 成果 | 健康・組織の状態が変わったか | 前後測定、健康風土、プレゼンティーズム等 |
KPIの選び方と経営層への説明方法は、健康経営の指標・KPI一覧と効果測定の設計方法で詳しく解説しています。
中小企業が小さく始める4ステップ
- 法令上必要な健康管理を確認する——健診、事後措置、ストレスチェックなど、自社に必要な対応を専門職と確認する。
- 課題を一つに絞る——既存データと従業員の声から、優先する健康課題を決める。
- 参加しやすい施策を一つ実施する——会議室、健診日、短時間プログラムなど既存の環境を活かす。
- 一つ以上のKPIで振り返る——参加率に加えて、行動の変化や次回参加意向を確認する。
制度を増やすことから始める必要はありません。健康経営の最初の一歩は、小さく始めて成果につなげる進め方でも解説しています。
お腹ソムリエを施策へ組み込む場合
お腹ソムリエは、10施策のうち「健康状態への気づき」「既存支援への参加」「前後の変化確認」を補完する評価サービスです。健康診断や医師の診断を代替するものではありません。
たとえば、測定→保健指導・運動・栄養支援→3〜6か月後の再測定という流れにすると、本人の行動と施策の振り返りを一つのサイクルにできます。熊本県の実証事業では、3か月後アンケートの回答者78名のうち82.1%が何らかの生活習慣改善に取り組んだと回答しました。詳しい条件と結果は熊本県実証事業のレポートをご覧ください。
よくある質問
Q. 最も効果が高い健康経営施策は何ですか?
すべての企業に共通する一つの正解はありません。自社の健康課題、働き方、年齢構成、既存制度に合い、従業員が参加しやすく、効果を確認できる施策を選ぶことが重要です。
Q. 健康経営優良法人の認定に有利な施策はありますか?
特定の施策だけで認定されるものではありません。自社の課題に基づく計画、実施、評価・改善を一貫させ、認定要件全体を確認してください。現在の申請情報は健康経営優良法人2027の申請準備でも整理しています。
Q. 予算が少なくても始められますか?
始められます。既存の健診結果やアンケートの分析、短時間の体操、相談窓口の再周知など、追加費用を抑えられる施策もあります。外部サービスを導入する場合も、対象人数とKPIを絞って試行すると評価しやすくなります。
参考資料
まとめ:施策の数より、課題とのつながりをつくる
健康経営の施策は、健診後フォロー、生活習慣、心の健康、働き方、多様な人材支援、健康風土など幅広くあります。すべてを実施するのではなく、自社の課題を一つ選び、参加しやすい施策とKPIを組み合わせることが第一歩です。
実施後は、参加率だけでなく、行動変容や前後の変化まで確認します。この小さなPDCAを積み重ねることで、単発イベントではなく、自社に根づく健康経営へ育てられます。
自社に合う健康経営施策を具体化したい方へ
従業員の気づきづくり、健康測定会、既存の保健指導・運動・栄養施策への接続、前後の効果確認まで、課題と対象人数に合わせてご提案します。